あけましておめでとうございます。健やかな新春をお迎えのことと、お喜び申し上げます。
新春トップ対談として、NTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長の庄司哲也様へ当社代表取締役副社長 吉弘京子が「グローバル化に向けた戦略と経営者の想い」をテーマにお話を伺いました。(2017年1月掲載)
吉弘
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
庄司
あけましておめでとうございます。よろしくお願いいたします。
吉弘
庄司様とは、30年来のお付き合いになりますね。
庄司
初めてお会いしたのは、NTTが民営化される前でした。交流が深まったのは、人事給与システムをご紹介していただいた頃でしょうか。私は、民営化に向けたプロジェクトで人事給与システムの効率化や最適化をさせようと検討していたところ、吉弘さんに「良いERPパッケージがありますよ」とご提案していただきました。
吉弘
そうでしたね。ERPが世の中に出始めた時節でした。これから企業がグローバルに戦っていく上で、従来の人事政策や評価体系でなく新しいものに変化しなければならないという強い思いがあり、ERPパッケージのPeoplesoftをご提案させていただきました。
庄司
当時国内でERPの事例もまだ少なく、米国に視察に行くなど、NTT再編の際にグループ全体の共通基盤となるシェアードシステムを創ろうと私も奮闘していました。USE様にカスタマイズしていただいた新しいERPシステムの導入が、NTTグループにとって大きな転機となりました。
吉弘
そう言っていただけると、とても光栄です。ありがとうございます。
吉弘
近年、経営戦略にグローバル化を掲げている企業が多くみられるようになりました。御社は、世界190以上の国/地域にネットワークサービス(以下:NW)を、140拠点以上にデータセンター(以下:DC)を保有するなど、まさに、日本を代表するグローバル企業ですね。
御社のグローバル戦略を聞かせていただけますか。
庄司
2011年来、サービス戦略として、「グローバルクラウドビジョン」という方針を定め、クラウド/データセンター/ネットワーク/アプリケーション/セキュリティ/マネージドICT などの各種サービスをグローバルレベルで最適に組み合わせた「シームレスICTソリューション」を提供しています。この背景には、企業の多国籍化・事業のグローバル化の加速(顧客の変化)、クラウドサービスの普及などに伴うIT業界での国境や業種を超えた競争の激化がありました。
2016年度は、さらに「SDx」(最先端Software Defined技術の様々な用途への活用)と「M」(マネージドサービス)を強化する方針を打ち出しています。これは、NW部分も含めてソフトウェアで様々な機能を制御することでお客さまのIT基盤をより柔軟に構築してご利用いただき、そのオペレーションまで私たちが対応することで、お客さまのビジネスに貢献するとともに、グローバル全域の収益を伸ばしていこうという思いです。
庄司
あらゆる業界で繰り広げられる、市場環境の急速な変化を私たちはチャンスと捉え、シームレスICTソリューションによる企業のお客さまのICT 環境の最適化を通じ、お客さまの経営改革に貢献したいと考えています。また、今年の4月に発表した「ビジョン2020」では、コーポレートスローガンとして「Transform.Transcend.」を掲げました。
吉弘
「Transform.Transcend.」には、どのような想いが込められているのですか。
庄司
私たちはお客さまのデジタル・トランスフォーメーションに貢献するICTプレイヤーという自負があるのですが、現状に甘んじることなく限界に挑戦しようという発想が根源です。そして「Transform.Transcend.」には、お客さまに向けたもの、私たち自身に向けたもの、2つの意味を込めています。「Transform.」は、お客さまのビジネスや社会の変革・進化を促すという意味と、それをやり遂げるために自身が変わるという意味があります。「Transcend.」にも、お客さまの期待や社会の想像を超えるサービスを提供するという意味と、今の私たちを超えていくという意味を含みます。お客さまの飛躍の手助けをするため、弊社自身の “ダイナミックな変革”と“飛躍的進化”が必要だと考えています。
吉弘
弊社の社訓も「断乎として能力の限界に挑戦せよ」です。一生懸命努力をし、限界に挑戦することは大事なことですよね。
庄司
はい。常にチャレンジし常に成長するマインドを会社も社員も持っていてほしいですし、自分自身にもいつも言い聞かせています。
吉弘
御社は、グローバルビジネスにおける課題をどのように捉えていますか。
庄司
すでにアジア地域では、GartnerやIDCなど第三者評価でリーダ評価をいただくなど、提供能力などの点で、No.1のICTサービス事業者としてのポジションを確立していると考えています。一方、欧米市場における競合企業との、認知度や顧客基盤の差は課題であり、引き続きNTTグループ一体となってGo to Marketに取り組んでいるところです。
吉弘
2016年7月には、イギリスのFormula1レーシングチーム、マクラーレン・ホンダ様とテクノロジー・パートナーシップ契約を結ばれておりましたね。
庄司
世界21箇所を転戦するF1を通じて欧米企業をはじめグローバルのお客さまにも、NTTコミュニケーションズの技術力を知っていただける機会になればと思っています。
吉弘
御社は色々な戦略を立てて、早くからグローバル化に取り組んでいる印象があります。
庄司
グローバル統合では、グローバルスタンダードとして共通化させるものと地域性や土地柄などのローカリティとして残さないといけないものがあります。各国で事業基盤やマーケット、お客さまなどが多種多様なため、集約は非常に難しいものでした。しかし、基本は信頼に基づく人間関係だと思っています。「これ一緒にやりましょう」「合わせられるよね」と、同調し合うことで進めていきました。
吉弘
そうですね、信頼関係を作ることは重要ですね。そして、庄司様の現場や人と人とのつながりを大切にされるお人柄は、とても素敵だと思います。昔、大きなイベントに出席した際、庄司様が「吉弘さん、こっちにいらっしゃいよ」と声をかけてくださって、色々な方にご紹介してくださりました。とても嬉しかったものです。
庄司
いやいや、ありがとうございます。私は人が好きで、現場が好きなんですよ。 仕事は楽しくやってもらわないと、と思っていますので、「知・好・楽」を好きな言葉として紹介しています。「知・好・楽」は論語からとったものですが、「知っているだけの人は好んでやっている人にかなわない。好んでやっている人も楽しんでやっている人にはかなわない」という意味で、物事に対する熱意や取り組む姿勢が、いかにその結果を変えるかということを述べています。これは、日本人以外には分かりにくいので、海外では「Fun to Work」で行こうよと話しています。
何事もポジティブに臨まないと良い発想も出ないと思いますし、怒りたいときは「笑ってないとダメ!」と自分に言い聞かせながら、いつも明るく前向きな姿勢で挑戦を続けていけたらいいなと、思っています。
吉弘
弊社は創業して間もない頃から、NTTコミュニケーションズ様を含めたNTTグループの企業様と一緒にお仕事をさせていただいております。また、研究所での最先端技術や製品の研究開発にも参加させていただき、取り組んでまいりました。弊社は、NTTグループに育てていただいたようなものです。これからも一緒に頑張らせてください。
そして、NTTグループ様には世界最大規模の通信事業者として、これからも日本や世界の最先端を走っていただきたいと期待しております。
庄司
はい。新しい価値を生み出す取り組みは、私たちの存在意義でもあると思っています。 USE様は、特に人事分野でノウハウやリソースをお持ちだと感じています。世界中のパッケージやサービスなどにも詳しいですし、ユーザが重宝していることや困っていることなども一番お分かりになられている。「日本の企業にはこうしたアレンジが必要ですよ」とか「システムの移行や変更をすると進化できますよ」といった発想は、すばらしいですね。
吉弘
ありがとうございます。人事分野は、20年以上取り組んでおります。単なるシステムを作り上げるだけでなく、運用しながらお客さまの声を聞き新しいものを提案する、というサイクルを回しています。急速にグローバル化が進む昨今、人事部門もグローバル化に対応していかなければなりません。弊社は培ったノウハウを基に、グローバル企業様のガバナンスを生かすお手伝いをしていきたいと思っております。
庄司
お客さまのグローバル競争力を高めるための働き方改革や効率化など、一緒に取り組んでいきたいですね。
吉弘
ぜひ、よろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
東京大学経済学部卒業後、1977年に電電公社入社後、秋田県大曲電報電話局に赴任。
1980年より2年間アメリカ、ニューヨーク大学に留学しMBAを取得。
1991年、東西統一後のドイツで現地法人を設立し副社長を務める。
1993年、信越支社に着任。
2001年、NTTビジネスアソシエを設立。退職再雇用制度導入や年金改革などNTTグループの構造改革に着手する。
2004年、障害者雇用促進法に定める特例子会社、NTTクラルティを設立。
2005年、NTT西日本に着任、人事部長を勤める。
2012年、NTTコミュニケーションズ副社長に就任。
2015年6月より現職。
趣味は、モータースポーツやラグビー、野球などのスポーツ観戦。なかでも、自らも若い頃ステアリングを握っていたモータースポーツ好き。
福岡県久留米市出身。
1970年 学生時代の仲間3名と株式会社ユー・エス・イーを創業。同年、システム研究所を東京に開設
1985年 日本電信電話公社(現NTT)の民営化と共に、業者登録認定を受ける
1995年 NTTデータから「協力企業大賞」を受賞
1997年 一般社団法人日本自動認識システム協会主催「システムインテグレーション優秀賞」受賞
1998年 通産省(現経済産業省) SI企業認定を受ける。
2000年 ピープルソフト(現オラクル)を活用し、ERPで人事制度改革はソフト業界初の試みを行う
2000年 Salesforce.com Inc社を訪問し、翌年にSalesforceを社内導入
2002年 セールスフォース社とパートナー契約を締結。日本国内で多くの顧客にサービスを展開
2005年 ピープルソフト伝道師の「最優秀賞(Excellent Evangelist)」の評価を受ける
“ピープルソフトのクィーン”の愛称で親しまれている
2005年 NTTデータから「協力企業大賞」を受賞
2018年 株式会社ユー・エス・イー 代表取締役会長(現職)
2019年 久留米商工会議所議員、ソフトウェア事業協同組合副理事長、ASPIC執行役員
およびグループ会社2社、IT系ベンチャー企業への投資・支援を行う。
※役職や所属は取材当時のものになります